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| [ Back ground ] 1.火星のテラフォーミング 2.火星暦 3.ユニット 1930年,オラフ・ステープルドンの『最後にして最初の人類(Last and First Men)』によって示された太陽系惑星の地球化というアイデアは ジャック・ウィリアムスンの1942年の作品『シーティー・シップ(Seetee Ship)』においてテラフォーム(Terraform)と名づけられた。 当時,SF小説の幻想でしかなかったこの壮大な計画は,カール・セーガンの'The Planet Venus(1961)'によって科学の道を歩み始める。 当初,人々の関心は,地球の双子星といわれていた金星に向けられた。 しかし,米ソ冷戦下での熾烈な宇宙開発競争の結果,金星は決して地球の双子星ではなく,濃厚な大気と灼熱の太陽光が降り注ぐ死の星であることが明らかになった。 次に人々が注目したのは火星である。1973年,カール・セーガンは火星のテラフォーミングについて述べた論文において「長い冬モデル」を発表した。 その後の調査研究により,彼の推算ほど楽観的な結果は得られないことが明らかになるが,この時彼の示したモデルは,その後の火星テラフォーミングの基礎理論として受け継がれることになる。 20世紀末のNASAマーズ・ダイレクト計画に端を発する火星移民計画は,21世紀に宇宙開発でイニシアチブを握った某国により,膨大な資金投入の下で開始された。 人類最大の協調,科学の勝利と賞賛を受ける一方で,明らかな蛮勇,神の摂理に悖るなど批判され,賛否交々言われ続けたこの計画は, 人類の救世主,世界の警察を自負する某国の軍事的圧力を背景に力強く推し進められた。 某国の採った計画は,セーガン理論を基礎とするクリス・マッケイの「火星の修復計画」に大筋で沿い, 環境変化の加速装置としてマーチン・フォッグらの手法を援用するものである。 具体的には,第一局面としてマッケイらのいう生物学的手法によりレゴリスや極冠中の二酸化炭素を解放し,火星大気の密度と温度を上昇させる。 濃密な二酸化炭素の大気が火星を覆い地球と同程度の大気圧になれば,人類は気密服を着なくとも,酸素マスクさえあれば火星地表で活動が可能になる。 第二局面として,そのような環境下の火星に対し,人類を段階的に移住させる。 この火星人類がフォッグらの緩やかな工業的手法によって環境変化を加速させるというものである。 某国による始まりの日からおよそ100年後,火星には遺伝子操作されているとはいえ,植物が繁茂していた。 そして未だ環境調整用コロニー等の気密空間に限られるが,人類の居住可能な環境に変化していた。ここに来て,計画は第二局面に至ったのだった。 1 sol ≈ 24:39:35 (ex. 1 day ≈ 23:56:04) 1 o.p.≈ 668.59 sols Summer year = 334 sols Winter year = 334 sols 28 sols by a month, 26 sols on Feb. Bis. years : +1 sols on Feb. by 4 years and +2 sols by 20 years 火星の自転周期は約24時間39分35秒である。また,公転周期は686.97(地球)日である。 火星における日単位はsolを用いる。この日単位は西暦1976年,NASAによるバイキング計画において採用されて以来,伝統的に使用されている。 公転周期を火星日数で表現すると668.59(火星)日となる。公転周期が地球の1.88倍であるため,火星の四季は地球の2倍近い長期間となる。くわえて,地軸が約25度と地球(23.4度)よりも傾斜しているため,日寒暖差,季節寒暖差は地球よりも大きい。 火星暦は人類の入植開始年を紀元としている。火星暦は以下の要件にて設定された。火星に入植した人類は,半公転1年とし,公転の前半と後半をそれぞれ夏年,冬年とした。 1火星年334solsを地球同様に12ヶ月で割ると(334/12=28-2),1ヶ月は28日になる。2月のみ26日である。 また,0.59sol/o.p.のズレを補正するため,4年(2o.p.)毎の2月末日に閏日1日を加えた。 さらに,0.18sol/閏年のズレを補正するため,20年(5閏年)毎に2月28日を設けた。 入植当初,懸念されたこととして,地球と比較しておよそ40分長い1日のために起こるバイオリズムの変調があった。 実際,入植初期においては少なくない人々がこの変調に苦しめられた。変調は身体に対して様々な症状となって現れた。 それらは総称して「火星病」と言われた。しかし元来,人類のバイオリズムが25時間周期であったために,時間の経過にともない,また世代を経るにともない容易に順応できた。 それよりも社会,経済をはじめとして,地球人類との間に発生する日付感覚のズレこそが問題であった。 その名残として,現在の火星では地球暦(グレゴリウス暦)を併記することがある。それは,地球人類がグレゴリウス暦と自身の民族暦(例:ヒジュラ暦,和暦,民国暦等)の双方を用いる感覚と同様である。 火星では単にユニット(unit)と呼称される一種の自律機械が普及している。ユニットが火星で汎用的に利用されるようになった要因は,植民開始当初における労働力と工業生産能力の不足という極めて現実的な課題にある。 火星人類が直面したのは,テラフォーミングが完全でないために火星環境は人類が屋外作業活動を直接行うには過酷すぎるという問題であった。植民を持続・発展させるためには各種の屋外作業活動は不可避である。もともと少ない火星労働人口の有効活用のため,当然の帰結として人ないしは人工知能の指揮の下,屋外作業を行う自律機械の導入が考えられた。 もちろん,これらの問題は当初から予見されており,地球から輸送された各種の作業機械が屋外作業任務に充てられた。しかし,拡大する植民規模に対して十分な機能・規模をもった作業機械を大量に導入することは困難であった。主たる原因は地球-火星間の輸送に関するコスト・物理的制約である。さらに火星環境の過酷さは機械製品にとっても同様であり,作業機械の故障は頻繁に生じた。メンテナンスに必要な代替部品の供給も数ヶ月待たなければならない状況が続いた。 現地生産による対応が協議されたが,当時の火星における工業生産能力は微々たるものであり,一朝一夕で地球と同等の作業機械を量産することは適わないと判断された。ここで一案として浮かび上がってきたのがモジュラーロボット(modular robot)の利用である。 モジュラーロボットはモジュールユニット(module unit)と呼ばれる小型の自律機械から構成される一種の群ロボットである。このモジュールユニットが火星における「ユニット」の語源となっている。 ユニット単体は自律機械としては比較的単純な機能しか持たず,例えば地球でよく見られるヒューマンサイズロボットが備える程度の高次機能や複雑な構造すら持たない。サイズは概ね人間の膝丈程度のものから,最大でも数メートルオーダー程度のものである。 モジュラーロボットがその特徴を発揮するのは,群ロボットと同じく複数のユニットが集合体として振る舞った場合である。一般的な群ロボットとモジュラーロボットが異なる点は,各ユニットに結合・乖離の機構が備わっているということであろう。 ユニット同士を結合・乖離させることで,モジュラーロボットは自身の形状・規模を組み替えることが可能である。作業環境や目的に応じて形状・規模を変化させることで,様々な任務に対応する汎用性の高いロボットであるといえる。また,均質なユニット同士によって構成されたモジュラーロボットは,故障が生じた際に故障したユニットを切り捨て,健常なユニットと置き換えることができる。これにより,部分的な故障により,全体としての機能を失わずに済むという利点をもつ。 これらモジュラーロボットの特徴,すなわち環境適応性(Adaptability),多機能性(Multifunctionalty),拡縮性(Scalability),耐故障性あるいは故障補償(Fault tolerance)は過酷な火星屋外環境において実用性が高いものと考えられた。しかし,何よりも火星生産設備で十分製造可能であることが評価された。前述したように構成要素であるユニット単体は単純な機能・構造で済む。試行錯誤の後,数種類のユニットが火星各所で生産されるようになった。 均質なユニットは量産効果が効きやすく,輸送やメンテナンスコストのかかる地球製の高機能自律機械に対して次第に流通量及び価格面で圧倒し,最終的にこれらを市場から駆逐した。 今日,火星ではユニットと呼ばれる小型の自律機械が無数に利用されている。これらユニットは相互に結び付きあるいは離れる。ときには生物の群れのように分散・協調して行動し,ときには集合してあたかも巨人のように振る舞っている。 火星はロボットの利用に関しても独自の生態系を築くに至ったといえるだろう。 |
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